With
episode.32 (ページ4/4)
胸が、ひどく締めつけられた。
ヤマトが、私のカカシ先輩に向けられた思いを、それでいいと言ってるんだとわかった。
そのまま貫けばいいと、そういう私が好きだからと。
自分の思いを押えこんでまで、ヤマトは私を肯定してみせる。
そうして、私は改めて思い知る。
自分がいつだってこの人のこの優しさに助けられてきたんだということを。
ずっとずっと支えられて、穏やかに見守られ、私はヤマトに守ってもらってきたんだ。
ヤマト――。
とっても大事なヤマトという存在。
告白されたことだって、正直すごく嬉しかった。
嫌いなんてわけないし、これからもずっと仲良くしていきたいって思ってる。
ただそれは恋人としてじゃなく、友達とか仲間としてなんだ。
だから、もう私には何も言う資格はない。
もしここで私が何か甘い言葉をかけたら、それはきっとヤマトをさらに苦しめることになるのだから。
だったら、私は冷静な言葉だけを口にして、わざと嫌われるほうがよっぽど優しいことだと思えた。
薄暗い玄関に漂う沈黙はひどく重たく濃厚で、この目に見てとれそうな感じさえする。
ふたりの間に落ちた静寂を、ヤマトが彼らしい温和な声でふわりと破った。
「任務は、カカシ先輩と一緒かい?」
「うん……」
私が小さく頷くと、それまで玄関のたたきに落としていた視線をヤマトがついっとあげた。
「カカシ先輩に伝えて欲しいことがあるんだ。頼んでもいいかな?」
ヤマトがひどく澄んだ眼で私を見つめた。
to be continued.
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