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episode.32 (ページ3/4)

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「ヤ……ヤマト?!」

慌てて声を上げる私の顔を、ヤマトは今まで見たことないほど真剣に見続ける。
そして、何を言うこともなく――、
顔を近づけてきた。

――――ッ!!

私の体に覆いかぶさるようにヤマトが唇を寄せてくる。
徐々に近づくヤマトの唇に自分の心臓が異常な跳ねかたをした。
呼吸が止まり、思考回路が完全にショートして、それでもたったひとつわかっていることがある。
私はそれを、揺らぎそうになる瞳に力を入れ、ハッキリと声にした。

「らしくないよ!! こんなの、ヤマトらしくないッ……!!」

数ミリで触れ合いそうなほど間近に迫った唇が、ピタリと止まった。
暗がりの中、私の瞳を覗き込むヤマトのそれを、私はじっと見続ける。
玄関内に流れる不自然な静けさと互いの視線の重圧に耐えきれなくなったように、ヤマトがふっと目を落とした。
と同時に私から体を離し、痛いほど強く押さえつけていた私の手首の拘束をするりと解いた。

「ごめん。それでいい……」

ヤマトが小さく呟いた。

「え?」

言っている意味がわからず聞き返せば、ヤマトは俯いたまま、ゆっくりと言葉をつづけた。

「僕は名無子の、まっすぐで、ひたむきで……そういう一生懸命なところが好きなんだ。だから……それで、いい」
「ヤマト……」



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