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episode.32 (ページ1/4)

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「名無子……」

玄関ドアを開けたヤマトが驚きの表情で私を見つめた。
Tシャツにスウェットパンツといういでたちで出てきたヤマトは間違いなく今まで寝ていたのだろう。
いつもよりも反応の鈍いヤマトの瞳に、私はもう一度謝った。

「ほんとにごめん、こんな夜明け前に」
「いや、いいよ。ただ、どうしたんだい?」

眠たげに右手で何度か髪を撫でつけ、ヤマトが答える。
戸惑いこそ含むものの、怒気はまったく感じられない。
ヤマトの相変わらず穏やかな雰囲気に私の胸がグッと苦しくなった。

でも、伝えなきゃいけない。
そのために私はここに来たのだから。

私は意を決してヤマトを見上げた。

「私、これから任務に出るの」

あの丘でカカシ先輩から逃げるかのように走り出した私は、涙で歪む視界を駆け抜け、そのまま火影邸に飛び込んだ。
理由はただひとつ。
綱手様に、カカシ先輩の任務に同行する許可をもらうためだ。
それも、たった一人の同行――。
当然、綱手様からは猛反対を食らった。
任務の危険性をとかれ、他の者も連れて行けと繰り返し説得された。
もちろん、私だってその手段を考えなかったわけじゃない。
しっかりとしたフォーマンセルを組むほうがカカシ先輩と私のツーマンセルよりもずっと生存率はあがる。
けれど、カカシ先輩のことだ、きっと他の忍がついてくるのを嫌がるだろうし、そうであればなんとかして自分だけで行こうと手を尽くす。
そのときに何が何でも食い下がれるのは私だけだろう。
他の忍にまでそんながむしゃらさは強要できない。
だって想いが、カカシ先輩に対する想いの強さが違うのだから。



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