With
episode.31 (ページ1/1)
必要なものはすべてリュックに入れた。
俺は住み慣れた部屋をぐるりと眺め渡すと、荷造りを終えたばかりのリュックをベッドに置いて、窓際へと足を進めた。
窓の外には夜明け前の、まだ星がキレイに輝く空が広がり、星たちの瞬きが窓辺に飾ってある写真立てのひとつひとつに降り注いでいる。
その光の中で、懐かしい写真から俺の大事な人たちが今の情けない俺の姿を見上げてくる。
俺が守り切れず失ってしまった人たちと、俺のはじめての教え子たち。
そして、今も生きてくれてる暗部時代の後輩ふたり。
俺はそのふたりと一緒に映る写真を手に取った。
ごめんな、名無子。
写真の中で泣くのを必死に我慢している女の子に向かって謝る。
俺はお前に何度もそんな顔をさせた。
きっと、もう一度……そう、俺が死んだらお前はまたきっと泣きじゃくるんだろう。
でも、そのときはちゃんと。
俺は名無子の横で彼女を心配そうに見守るヤマトの姿に目を滑らせた。
ちゃんとヤマトが支えてくれる。
「幸せに、してもらえよ、名無子……」
俺は手にした写真立てを元の場所へと戻し、背を向けた。
ベッドの上に転がるリュックを取る。
それを肩に背負って、俺は玄関に向かった。
to be continued.
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