With
episode.28 (ページ2/3)
私がすぐ横にまで達しても、カカシ先輩はまったく動く気配も見せず、私はドキドキ言う胸を抱えたまま、その場にペタリと座りこんだ。
カカシ先輩……本当に寝ちゃってるの?
心の中で問いかけながら、本の下に隠れたカカシ先輩の顔を瞬きも忘れて見つめた。
丘を吹く風は私たちを優しく包みこみ、穏やかな時間がふたりのまわりを流れていく。
カカシ先輩の銀髪が風にさわりと揺れて、私の胸がちょっとしめつけられた。
触りたいと思う。
カカシ先輩の髪に。
カカシ先輩自身に。
いつも追いかけてきたカカシ先輩。
ずっとその背中を見つめて、手を伸ばしてきた。
手なんかちっとも届かなくて、それどころか、カカシ先輩にとって私はきっとめんどくさい存在でしかないだろう。
『このままじゃカカシ先生、きっと死んじゃいます……!!』
サクラちゃんの必死な声が脳裏によみがえる。
私は大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
それは……やだよ。
心に呟く。
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