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episode.27 (ページ3/6)

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通い慣れた忍具屋ではいつもの何倍もの真剣さで必要な品々を選んだ。
少しでも余計なことを考えないようにするための私なりのあがきだ。
でも、いつまでも店内で忍具を選んでいるわけにもいかなくて、私はかつてないほど念入りに選んだ忍具を手に会計を済まし、それらをリュックに入れて外に出た。
考えることがなくなると、すぐに気持ちは大きく振れる。
求めても手に入らないたった一人の存在に向かって嫌でも思いはほとばしる。
それを振りきるように私は人でにぎわう商店街を足早に歩き出した。
人々の喧騒はどこか遠くに感じられ、辺りに人が溢れているのにそこから私だけ隔離されている錯覚に陥る。
ひどい孤独感。
自分がこの世界とのつながりを断たれたような、もう二度と誰かと繋がれないような空虚さ。
こんな変な感覚におかされるのはどうしてだろう。
心当たりならあるに決まってて、けれど私はそんなものから目を逸らし、ただこの人の波もこの変な感覚も早く抜けようと必死になっていた。
そのとき、

「名無子さん!」

女の子の声に呼びとめられる。



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