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episode.27 (ページ1/6)

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何もしたくなかった。
任務から帰って来てからというもの、私は中身をどこかに置き忘れてしまったように茫然自失の態でいた。
ベッド脇に座り込み、その縁に額を預けてろくに身動きできないでいる。
まっ白な頭の中にはただ一つ、

『お前にはヤマトがいるだろう?!』

そう言って私に怒ったカカシ先輩の声が絶え間なく響いていた。

カカシ先輩……。

自分の存在を受け入れてもらえないんだと思うたび、背中に触れたヤマトの胸の熱さがよみがえる。
私を真剣に思っていると気持ちを告げてきたヤマト。
でも正直、今の私には彼の思いまでちゃんと考えてあげられるほどの余裕はなかった。
考えようとすれば、いっそう混乱が深まっていく。
思わず私は目をつぶった。
苦しくてたまらない。
自分の気持ちが壊れそうで、でもどうしたらいいのかなんてちっともわからなくて、何かにすがるように心が無意味な悲鳴をあげて、救いを求めている。

『カカシ先輩のことはもう、諦めよう』

それは数日前ヤマトに言われた言葉だ。
その言葉はきっと正しい。
きっと正しくて、間違っているのはここまでカカシ先輩を追いかけてきてしまった私のほうなんだろう。
先輩が振り向かないことも、ヤマトが支えてくれていることも、私はちゃんとわかってたはずなのに。
それでもアナタをずっと追いかけてきてしまった。



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