With
episode.25 (ページ3/6)
「どういう意味だ?」
俺は細めたまなこの隙間から鋭く向けられた綱手様の視線をまっすぐ受け止め、ハッキリ告げた。
「私一人で行ってきます」
「――ッ!! 何言ってるんだ、カカシ?! そんな提案飲めるわけないだろう?! 先遣隊のメンツが全滅するようなところへお前を一人で行かせられるものか!! 死ぬぞ、お前?!」
死ぬ、か……。
正直、今はそれもいいと思えた。
大事な人なら腐るほど失った。
大事な人を守れなかった自分なら狂いそうなほど呪った。
でもそれも俺が死んでしまえば終わりを告げる。
誰かを失って悲しむことも、自分を責めることも、そのすべてがなくなるというのなら、死んでしまうという選択肢も決して悪いものではない気がする。
そんな思いに支配されたとき、不意に耳の奥で声が響いた。
『私は……私は生き続けます。カカシ先輩に失う痛みなんか絶対感じさせない』
名無子……。
アイツらしいひたむきな瞳が脳裏に浮かんで、俺の肺が水に潜ったように息苦しく圧迫された。
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