With
episode.03 (ページ3/4)
「あ…うん。ありがと」
私はオズオズとテンゾウの手から串を受け取った。
「さぁて、これでみんなに魚が行きわたったかな! それじゃぁ、さっそく、いっただっきまーす!!」
元気にそう言うと、テンゾウは自分用に手に取った焼き魚にガブリッと噛みついた。
「うん、うまい!!」
焼きたての熱さにハフハフ言いながら、テンゾウは実においしそうに勢いよく食べていく。
そんなテンゾウから、私は自分の手に握られた魚に目を移した。
ホカホカとした白い湯気とともに立ちのぼる焼き魚の香りが、私の鼻腔をついて思わずウッと視線をそらす。
食欲をそそるはずの芳ばしい香りが、ひどい臭気にかき消される感じがした。
食事を準備する前に、体についた返り血を、あれだけしっかり川で洗い流したというのに、それでもまだ、自分の体からは血の匂いが取れずにずっとその生々しい匂いを溢れ出させている気がする。
食べれない……。
とうていそんな状態では魚に口をつけることなどできず、私はただ静かに串を握りしめていた。
私の様子に気づいたテンゾウが声をかけてくる。
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