With
episode.25 (ページ2/6)
俺が静かに呟くと、
「おそらくな。全滅したと見ている」
綱手様は苦しげに親指の爪をガリっと噛んだ。
火影として、医療忍者のひとりとして、里の命が奪われた現実に憤る姿を前に、俺の胸にも何かが饐えたような酸っぱい感情が広がった。
その任務に誰がついていたのかは知らないが、人の死を散々見てきた俺には仲間の全滅という漠然とした情報だけでもどす黒い記憶を呼び覚ますには充分すぎだ。
俺は視線を床に落とし、一呼吸おいてから綱手様に任務の内容を確認した。
「でしたら、私はその後遣隊ということですね」
全滅した隊の任務を引き継ぎ、諜報活動のため油隠れの里に侵入を謀る。
後遣隊の意味を即座に理解して、綱手様が俺の目に頷いた。
「そういうことだ」
「わかりました。早急に出発します」
「頼む、カカシ。でだ、連れていくメンバーに希望はあるか? お前が必要だと思う者を言ってくれれば調整して集めるつもりでいるが。なにしろ、事を急ぐ。こちらとしてもメンバーがそろい次第、すぐに里を出発してもらいた……」
「いえ、その必要はありません」
綱手様の言葉を遮り、意見すると、綱手様は怪訝そうな表情で俺を見つめた。
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