With
episode.24 (ページ2/2)
数日後、俺は綱手様に呼ばれた。
ノックをして火影室に入ると、綱手様は待ちかねたように俺を迎えた。
「カカシ、来たか」
ハイ、と頷き、執務机の前に立つと、綱手様が少しだけ首を傾げた。
「大丈夫か、カカシ?」
「は?」
質問の意味がわからず、思わず素で返事を返す。
すると、綱手様の相変わらず隙のない視線が返ってきた。
「ついこの間の任務報告の時も思ったんだが。お前、いつもと様子が違うぞ? 何かあったのか?」
鋭くうかがう瞳の中にも相手を思いやる優しい光が見えるのは実にこの人らしい表情と言えた。
けれど、その瞳に答えることは何もない。
そう、何もない。
何もないさ。
いつもと違うことなんか別に起きてはいないのだから。
頭の中に浮かぼうとする名無子の泣きそうな顔を頑なにねじ伏せて、綱手様の目を真っ直ぐ捕らえた。
「いえ。何もありません」
綱手様は納得いかなそうな雰囲気で俺を吟味したあと、フッと一瞬目を伏せた。
「そうか」
短く告げると、パッと視線を俺に向ける。
「それじゃあ、任務の話をしよう」
話を変えた綱手様の顔にもう憂うような色は残っていなかった。
to be continued.
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