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episode.24 (ページ1/2)

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数日ぶりに戻ってきた自宅の玄関はひどく淀んだ空気でくすぶっていた。
中に足を踏み入れながら、俺もこの空気と似たり寄ったりなものだと思う。
俺の気持ちとこの空気と、そのどちらもが激しく淀んでる。
ベッドの置かれた部屋まで来ると、背負っていたリュックを床に落とした。
頭から額あてをはずし、リュックと同じように無造作に足元へ捨てる。
着ていたベストも床板の上にバサッと無残に転がった。
俺はベッドの端に腰かけ、頭を抱え込む。
自分の髪をグシャッと力任せにつかんだ。

『僕は……本気で先輩に嫉妬してるんです』

『お前はアイツを大事にしろよ、俺じゃなくて!!』

ヤマトの言葉と自分の言葉が頭の中をぐるぐる回る。

これでいい。
これでいいとわかってる。
名無子はヤマトとうまくいくのが一番いい。

それはわかっているのに、名無子の涙を必死に我慢する顔が脳裏から全く離れていかず、俺の胸がこれでもかというほど軋みをあげる。
そして、それ以上に自分の気持ちを切り裂くのはあのふたりの未来予想図だ。
名無子とヤマトの幸せそうに笑って寄りそう姿が嫌でも脳内に湧き上がり、これから確かにこうなるとぬぐいようのない現実感を持って俺に突き刺さる。

「クッソ……!!」

俺は髪をつかむ手にさらに力を入れ、ぎゅっと目をつぶった。

バカか、俺は。
俺がつらくなる理由なんてどこにもないだろう?
なのに。
なんで俺はこんなに……。
すべてに納得いかないんだ――。





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