With
episode.23 (ページ4/4)
ヤマトの正直で誠実な言葉は確かな思いを込めて、一つ一つゆっくりと丁寧に紡がれていく。
「だから、僕のそばにいてくれないか、名無子? 僕はずっと名無子のことが好きだったんだよ」
ドクドクと体が異様な速さで脈を打つ。
でもそれは自分の心臓のせいではなく、もしかしてヤマトのものかもしれないとも思う。
ヤマト――。
いつだって私のことを見守るように支えて励ましてくれてたヤマト。
その気持ちに気づいてないわけじゃなかった。
でも、思いを告げられてもなお頭に浮かぶのはあの人の顔だった。
カカシ先輩……。
「わ、わたし……」
ヤマトの腕の中で私が口を開こうとすると、ヤマトはスッと私の体を離した。
「ごめん、励まそうと思ったのに、逆に混乱させたね。返事は今じゃなくていいから。今日はゆっくり休んで。じゃあ……」
草を踏む足音がして、私の背後からヤマトの香りが遠ざかっていく。
上忍時代、暗部時代と誰よりも一番近くにあり続けたその香りは森林で感じるような清々しい木々の匂い。
それが次第に離れていく。
そのことに寂しいと感じなかったわけじゃない、引き留めたいと思わなかったわけじゃない。
それでも私は振り向くことができず、体に残るヤマトの香りと体温を抱きしめたまま、薄れていくヤマトの気配をただ背中に感じていただけだった。
to be continued.
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