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episode.20 (ページ5/5)

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ギャーギャーと響く俺たちの声が夕焼け空を映す川面にコロリコロリと転がり落ちる。
一緒にいるのが本当に楽しくて兄弟のように思っていたヤマトと名無子。
いつまでもずっとそうだと思っていたのに。
妹という存在に他ならなかった当時の名無子が俺の中で昨日の名無子へと変身して、自分の胸をクッと締めつけた。
アイツの言葉のひとつひとつに、俺を見つめる懸命な瞳に、俺は簡単に吸い込まれて、どうしようもなく離したくなくなった。
抱きしめて、そのまま俺はアイツにキスをしようとした――。
アイツの華奢な体の柔らかさも、唇に触れた互いの息の熱っぽさも、やけに鮮やかに俺の体に残っていて、いつも静かな自分の気持ちが高ぶってるのが嫌でもわかる。

名無子……。

いつもあれだけ俺の後ろを追いかけてくるアイツが今日はちっとも俺のそばに寄りつかない。
俺が話しかけても、それどころか、アイツを見つめる俺の視線に気づいただけで顔を真っ赤に火照らせ逃げてしまう。
きっとそれは昨日俺がキスなんかしようとしたからだ。
だから仕方のないことなんだ。
でも、アイツがスルリと離れて行くたびに俺の胸には穴があいたような空しさがこみ上げた。

お前がそばにいないことでこんなにも空虚な思いをするなんて――。

暗部の頃、うすうす気づいていたアイツの好意に知らぬ顔を決め込んで、ヤマトに協力していた自分は一体どうしたっていうんだろう。
俺は今だってその立場にいなきゃいけないのに。

こんなに熱くなってたら、いけないのに――。

ふっとそばに人の気配がして、俺はゆっくりとそちらへ目を向けた。
視線の先に真剣な眼をしたヤマトが立っていた。





to be continued.
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