With
episode.20 (ページ2/5)
夕暮れ時の川の中で俺とヤマト、名無子の三人は魚を追いかけ回していた。
遊びで、ではない。
今晩の晩飯のために、だった。
各自、水中に手を突っ込み、魚を活けどりにしようと四苦八苦していると、ヤマトがしびれを切らして叫んだ。
「先ぱーい。もう結構、魚つかまったんじゃないですか? そろそろ充分じゃありません?」
俺は視線を水面下に落としたまま、呆れたように口を開く。
「あのねぇ、まだ充分なわけないでしょ? 一番食べるのお前なんだからね? 文句言わずに頑張んなさいよ」
「はいはい、わかりました」
ポリポリと頬を掻きながら不満げに呟いて、ヤマトはしかたなく再び水中に手を突っ込んだ。
でも、それも数秒ともたず、
「サザンカ」
ヤマトは名無子を呼ぶと、
「何?」
と言って振り向いた名無子目がけ、バシャッ!! と水をかけた。
「ちょッ!! 何やってるの、ヤマト!!」
ビックリしてヤマトを見る名無子に構わず、ヤマトはホラホラと嬉しそうに水しぶきをはねあげて、そんなヤマトから名無子は必死に逃げていく。
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