With
episode.19 (ページ1/2)
早朝の眩しい光が降り注ぐ。
ヤマトの作ってくれた一軒家のニ階で私は荷物整理をしていた。
昨日、あれから私はヤマトとこの家に戻り、寝についた。
でも、正直、眠った気など全くしていない。
ずっとずっと今まで心も頭もカカシ先輩のことで破裂しそうな感じだったんだ。
カカシ先輩……。
私は自分のリュックの中にあるタオルを右手で握ったまま、昨夜のカカシ先輩の姿を思い出していた。
私を抱きしめた腕の感触も、私を包み込むような穏やかな香りも、その全てが何もかも忘れられなくて、私の胸を簡単に早打ちさせる。
そして、徐々に近づいた私たちの唇――。
私は左手の指先で、そっと自分の唇に触れた。
キス……しようとしたんだよね?
私の胸がさらに苦しく脈打った。
と、不意に背中に声をかけられる。
「名無子さん?」
ハッとして振り向くと、同室のサクラちゃんが不思議そうにこちらを見つめていた。
「どうしたんですか? ボーっとして」
「え? あ、ううん、なんでもないよ。さてと、顔洗いに行ってくるね!」
私は慌てて笑顔を作り、リュックの中からタオルを引っぱり出して、パタパタと部屋を後にした。
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