HALF.
episode.42 (ページ1/3)

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辿りついた病院のその裏庭に俺は迷うことなく足を踏み入れる。
いつも院内の廊下から見ていた裏庭の片隅。
でっかい木に隠れるようにして、いつもあの子が泣いていた場所。
そこにはやっぱり――名無しがいた。
いつもより小さく感じるその後ろ姿に俺は静かに声をかける。

「俺がまだアカデミーにいた頃、怪我して治療にくるたびにこの裏庭でその木に隠れるようにしゃがみ込んで泣いてる子がいてさ。いつからかパタッと見なくなっちまったけど、その後どうしたかなって、なんか気になってたんだよ」

グシグシと手で顔をこすった後、名無しが俺を振り向いた。
涙で濡れた顔を俺に向ける。

「隊長……」

水気の多い真っ赤な瞳で見上げられ、俺は訳もなく確信していた考えをアイツに告げた。

「お前があの子だったんだよな、名無し」

俺たちの間に沈黙が落ちる。
名無しはまた前を向いた。
そこから肩越しにいつもより鼻にかかった声が聞こえた。

「先輩について見習い中だった頃、亡くなるひとがいるたびにここで泣いてたんです。命を救えないことがすごく悲しくて。それをエイシンがいつも励ましてくれた。エイシンが里を出て行くときに、もう泣くなって言われたから、一人で寂しくても病院で誰かが亡くなって悲しくても、泣くのやめたんです。もう泣かないって、決めたんです」

きっとその頃なんだろう、俺がコイツを見かけなくなったのは。
納得する俺に名無しは前を向いたまま話し続ける。

「私には隊長やエイシンが忍としての才能を持つみたいに医療忍者としての才があるわけじゃないけど、それでもちゃんと命を救える医療忍者になろうって誓って、私の前でもう誰も死なせないってそう思ってやってきたのに」



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