HALF.
Eishin said. (ページ1/3)
いろいろあったな。
俺は感電した体を襲う内臓から湧きあがる痛みをこらえ、目に沁みる空の青さを妙に穏やかな思いで見上げた。
お前と離れて過ごしたこの数年間、本当にいろいろあった。
いろいろあったよ、名無子――。
「父さん、名無子も一緒に連れていけばいいじゃないか! ここに一人だけで置いていったらかわいそうだろ?!」
五年前、木の葉を抜けるという話を両親から聞かされ、俺が真っ先に心配したのは名無子のことだった。
親を失くして一人ぼっちの名無子をこんなところに残していったら今度こそ、アイツは正真正銘一人っきりになってしまう。
泣き虫なアイツをそんなふうにするのが嫌で俺はオヤジに噛みついた。
「そうは言ってもな……」
オヤジは苦渋の表情で俺に答えた。
「里を抜けるのは重罪なんだ。私たちは他の同士たちと新たな一派を立ち上げ、ゆくゆくはこの木の葉を取りこもうと考えている。その目的を家族でもないあの子に訳も分からず持たせて、さらに抜け忍という重荷を負わせるのはかわいそうに思う。里に残っていればまず生きていくのは困らないはずだ。今はそのほうが名無子ちゃんにとっても幸せだろう。わかるな、エイシン?」
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