HALF.
episode.19 (ページ5/7)

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どのくらい走ったろう。
子グマを追って疾走していた俺の五感にふと人の気配が届いて、俺はそっと足をとめた。
息をひそめ、辺りをうかがう。
ガサッと子グマの姿が目の前の低木に飲みこまれ、それを目で追った俺の耳にその向こう側から聞こえる話し声が届いた。

「楽に連れ出せたな」
「ホント隙だらけだったわね、この子」

男と女の声だ。
俺は音をたてぬよう低木のそばに近づき、茂み越しに奥の様子を覗きこんだ。
休憩中といった態で木の根元に腰を下ろした男女が二人、無防備に話をしている。
その姿を見て俺はあっと息を飲む。
見たことのあるブルーグレーの忍服に黒のベスト。
おそろいの忍マスクの下に見られるその顔は忘れもしない、先日あのキノコ野郎と一緒にいたサグという男とリダという女のものだった。

アイツらこの間の……!!

二人の座る足元には気を失った名無しの姿もある。
これで名無しが拉致られたことは明白だが、拉致ったはずの旅装束姿の夫婦はどこにもいない。
そのことに俺はすぐさまあの夫婦はコイツらが変化の術で化けていたに違いないと理解する。

けど、そうまでして何のために名無しを……?!

眉間に力を込めた俺になど全く気付かず、リダは余裕の表情で口を開く。



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