HALF.
episode.18 (ページ4/5)
そして、その感覚に押し付けられる最悪の予測。
それが今まで打ち立ててきた楽観的な推測の数々を津波のように飲みこんでいく。
……違ぇよな?
アイツは逃げたわけじゃねぇ。
そうじゃなくて、たぶん名無しはこの場にいられない状態になったんだ。
そっちの考えのほうが今の俺には正しい気がした。
じゃあ、その「ここにいられない状態」ってなんだ?
俺は組んでいた腕を解き、右手を口元に持っていく。
簡単に思いつくのは、名無しが誰かに襲われ連れ去られたという展開だ。
それをやったのがあの旅装束のふたり組み。
その目的こそ見えないが、そう考えるとしっくりいく。
考えてみれば、いくら発作がおさまったからといって彼らが薬ももらわずに立ち去るのもおかしい。
たしか発作が起きた時飲む薬を切らしてるって言っていたはずだから、普通、薬くらいもらって行くだろう。
病院に向かったとも考えられるが、それなら俺が病院から戻る途中でその姿を見かけないわけがない。
そう考えて行くと、彼らの行動は腑に落ちぬ点が多すぎる。
それに。
俺はふっと地面に目を落とす。
土の上に残された人の足跡を俺は注意深く見つめた。
小路の埃っぽい道の上には大きめの靴跡とそれよりもやや小さいものとがふたつ、大通りとは反対の奥のほうへと続いている。
その歩幅とつま先に重心のかかった痕跡から明らかに人が走っていると思われるものだ。
心臓発作起こした奴がすぐ走りだせるわけねぇーな。
ってことは、だ。
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