HALF.
episode.10 (ページ4/5)
「だから言ったろ? お前らの窮地に変わりはないって」
ファラが満足げに笑った。
その雰囲気に、
マズイ―――。
本能的な危険を感じて、俺は名無しのもとに走りだそうとした。
でも、すぐに、自分が今ここから離れられないことに気づく。
イノ……。
俺はイノに目を向けた。
今、イノの体は意識が抜けてしまってる。
俺がここを離れたら、中身の不在なイノの体は敵の格好の餌食だ。
それはできない。
クッと、俺は目の前の現実に歯噛みした。
その間に、ファラはもう名無しの前にまで達している。
ドクドクと脈打つ動脈に追い立てられながら、俺はイノに向かって大声をあげた。
「イノ、自分の体に戻れ!!」
「えっ、何?!」
「自分の体に戻るんだ! 早くッ!!」
「わ、わかった!」
女との激しい攻防の中で、イノは相手から繰り出された腕を弾き返して後ろに飛びさがると、すぐさま、解ッ! と術をといた。
イノのその声を確認すると同時に、俺は駆けだした。
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