HALF.
episode.05 (ページ6/7)
色紙にはなんだかよくわからない茶色いシミが、右上の部分に結構な大きさで広がっている。
名無しはそれにチラリと目を走らせると、
「あら、隊長、めざと……スルドイ! コレはなんと言いますか、名誉の負傷ってやつでして……。あれは寒い冬の夜に……途中、省略、カボチャの煮汁です」
「それのどこが名誉の負傷だ!! ちっとも名誉じゃねぇーじゃんよ!! しかも説明ハショるなよ! 気になるから!! もう、お前、ホントに歌麻呂ファンなわけ?! 大事なサインにカボチャの煮汁こぼすバカいねぇーよ! あ、いや、いた、ここにいたよ!!」
「あーもう隊長、大げさ。大丈夫ですよ、すぐ書き直してもらえますから」
「え、そうなのかよ?」
意外な言葉におとなしくたずねると、名無しはウンウンうなずいて答えた。
「そうですよ。言えばまたすぐ書いてくれます、シカクおじさんが」
「って、おやじィィィーーー?!」
何やってんだよ、アイツ!!
いい年こいて、人のサインなんか模倣してんじゃねぇーよ、恥さらし!!
名無しもうちの親父が書いたニセサインを後生大事に持ち歩いてどーすんだよ!!
っつぅーか、お前ら二人、一体どーゆー知り合い?!
なんかすげぇめんどくせぇーーー!!
顔色を変えて叫ぶ俺を、横でイノが大笑いしている。
あーもうゲンナリだ……。
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