HALF.
episode.05 (ページ5/7)
説明に納得した俺の前で名無しはリュックん中をガサガサやると得意げな笑みを浮かべ、
「あと……コレコレ。ふふふ。ジャーン!!」
俺らの前に一枚の色紙を突き付けた。
そこには『名無子さん江』に始まり、よくわかない文字で誰だかのサインが書かれている。
「何だ、これ?」
首をかしげた俺に名無しが有頂天に叫ぶ。
「コレはなんと!! 歌サマのサインですッ!! キャーーー!!」
「は?」
うたサマのサイン?
「え? 誰よ、歌サマって?」
訝しげにたずねる俺とイノに、名無しは大げさな驚きようで声を張り上げた。
「えぇ?! アンタら何言っちゃってんスか?! 歌サマっつったら落語界の大御所、桂歌麻呂師匠に決まってんでしょーが!! 大好きなんス! 私、歌麻呂師匠大好きなんス!!」
「はぁー?」
心底あきれ果ててるイノの横で、俺も負けず劣らずな声を出す。
「っつぅーか、その色紙のシミ、何?」
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