HALF.
episode.45 (ページ4/4)

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「名無しの父親も木の葉の忍だったが、名無しが小さい頃に任務で命を落としてしまってな。そのあとは母親と二人で生活してきたそうだ。だが、母親は体が弱く、ずっと病で寝たきりだったんだ。働けるわけでもなく、逆に娘に看病してもらう身、薬代なんかもバカにならない。迷惑かけてばかりのそんな自分が嫌だったんだろう、母親はある日、自宅のリビングで頸動脈を切って自殺してしまった。その姿をアカデミーから帰ってきた名無しが見つけたんだよ」

綱手が空中の一点を沈痛な面持ちで見据えた。

「ずっと母親のそばに膝まづいていたらしい。異変に気付いたものが見に行ったとき、名無しは床に広がる血だまりの中で母親の首の傷を必死に押さえながら震えていたそうだ。彼女が7歳のときのことだ」
「………」

言葉が出てこない。
エイシンの首筋を、白い手を赤く染めて押さえ続けた名無子の姿が意味もなく俺の頭を占めていく。

「彼女が医療忍者を目指したのはそれがきっかけだと聞いている。病で寝たきりでも母親に生きていて欲しかったんだろう。その命を救えなかった自分の無力さを悔やんでこの道に入ったのさ。そして、もう誰も死なせないと思って頑張ってきた。それがアイツの救命に対する執着の理由だ」

妙に乾いた風が窓から部屋に舞いこんで呆然とつっ立つ俺のまわりに綱手の声を巻き上げた。
何を考えたらいいのか、何をどう言ったらいいのか、それすらわかりかねる俺は、いつも通り前を流れゆく時間をただ見つめるばかりだ。
その俺に綱手がつっと視線を寄こした。

「シカマル。私の知っていることはすべて話した。お前がもし、専属の医療忍者にアイツを望むなら、あとはお前自身で説得してこい」

俺の顔をまっすぐ見据えた綱手の瞳が、任せる、と言っていた。
あとは、お前に任せる、と――。
無意識のうちに両手がグッと握られ、硬いこぶしを作っていた。
唇を引き結び、そして――。
俺は走り出していた。
部屋の外へと、力任せにドアを力任せに押し開け、転げるように廊下に飛び出す。
そのまま廊下を突っ走っていた。





to be continued.
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