HALF.
episode.40 (ページ2/6)
それに、アイツのことを考えると到底そんな気は起きなかった。
名無し――。
心の中で呼びかけた人物が、俺の横を通ってエイシンへと近づき歩いていく。
パシャ、パシャと水を踏む音がして、エイシンのそばに名無しが座りこんだ。
仰向けに転がるエイシンを見つめ、名無しは掠れた声を出した。
「隊長。エイシンを、治療してもいいですか」
「……あぁ、治療してやれ」
今ならまだきっと、名無しの腕ならあの男を助けてやれるだろう。
俺は静かに頷いた。
だが、その俺を慌てて止める声があった。
チョウジだ。
「シカマル! 相手は敵だよ?!」
きっと戦いの最中に意識が戻ったのだろう、背後から届いたチョウジの聞きなれた声に俺はホッと息をつく。
そして、名無しに目を注いだままでハッキリと言いきった。
「わかってる。だから応急処置までだ。それでも何か問題が起きたら、そのときはすべて、俺が責任を取る」
「シカマル……」
チョウジの困惑する声を背に受けて、俺は名無しに告げた。
「助けてやれ、名無し」
「ありがとうございます、隊長」
名無しがエイシンの左体側から手を差し出し、治療を開始する。
エイシンの体には外傷らしい外傷は見当たらない。
けど、感電ていうのは外見よりも体の中に甚大なダメージを与えてしまうものだ。
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