HALF.
episode.34 (ページ6/7)
絶対ェ行かせねぇー。
幼馴染だかなんだか知んねぇーけど、お前を渡してたまるかよ。
俺は自分に言い聞かせるみたいに呟いた。
「どんだけ強いかなんて関係ねぇ。戦う前から諦めてんじゃねぇーぞ。やってみなきゃわかんねぇだろーが」
名無しが不安げな顔で俺を見上げている。
初めて見るコイツのこんな表情に無性に胸が締め付けられた。
いっつも飄々と俺に腹立たしいこと言ったりやったりしてるくせに。
怪我した俺を治療して、その後いつも笑ってみせて。
いつだってそんな名無しなのに。
そんな名無しに、こんな不安な顔させてんじゃねぇーよ――。
俺の中でこれでもかってほどわけもわからず湧きあがる怒りがエイシンに向かった。
それを精いっぱい押さえつけ、俺は名無しに言う。
「お前はさがってチョウジの手当てを頼む。他には何もしなくていい。ただお前の持ってる道具に借りたいものがある」
品の名前を早口に伝えると、名無しはリュックを背からおろし、中からそれを取りだした。
差し出しながら名無しが俺の目を見た。
「エイシンは腕から手にかけて普通の人と違う作りになってるんです。他は私たちと全く同じ構造です。だから……あの両手両腕には気をつけてください」
「名無し……」
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