HALF.
episode.34 (ページ5/7)
俺はバッと名無しを振り向いた。
「何言ってんだよ、名無し!!」
名無しがエイシンを見つめたまま静かに言う。
「隊長、エイシンが本気でかかってきたら私ら本当に殺されちゃいますよ。だったら……」
足を一歩踏み出した名無しの手を俺がつかんで引きとめる。
俺を見上げる名無しの目を真剣に見返した。
「どーしたんだよ、いつも滅茶苦茶やるお前が今日に限って正攻法かよ? らしくねぇーんだよ。幼馴染が相手だからか? 相手がアイツだからか? だからそんなこと言うのかよ?」
「隊長……」
相手が、アイツだから、なのか、名無し――?
意地の悪い質問だってわかってる。
誰だって相手が仲のいい幼馴染だったら戦いをためらうのは当たり前だ。
だけど、言わずにはいられないそんな嫉妬を感じて俺は思わず口走った。
そして、
「お前はどうしたい?」
本当にアイツと一緒に行きたいって、お前はそう思ってんのかよ?
絞り出すような俺の問いに、名無しは無言のまま、それでもほんの少しだけ俺がつかむその手を握り返してきた。
まるで俺に助けを求めるような弱々しい力。
けれど俺には充分だった。
それで充分だと思った。
握り返された手の平に、名無しの、当惑しながらも俺に救いを求めた意志を見て、俺の心がはっきり決まる。
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