HALF.
episode.33 (ページ3/4)

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真夜中の名無子の部屋、その窓を外からトントンと叩く音がした。

「名無子、名無子」

すでに布団に入っていた名無子はその聞きなれた声に目を覚まし、ベッドから起き出した。
バルコニーに面した窓を開けると、そこには幼馴染のエイシンが立っていた。

「エイシン? どうしたの?」

寝ぼけ気味の目を手の甲でコシコシ擦る名無子をエイシンがまっすぐ見つめた。

「俺、これから里を抜けることになった」
「え?」

意味もわからず名無子はエイシンの顔をまじまじと見上げる。
その視線にエイシンは目元を歪め、痛みでも我慢するような表情を浮かべた。

「親と一緒にさ、突然行かなきゃなんなくなって」
「そんな急に……」

驚きを通り過ぎ、名無子は泣きそうな顔になる。
ついこの前、エイシンが作った例の術を名無子がようやく習得し、ふたりで祝ったばかりの、その矢先の出来事だった。
それは名無子を喜びの淵から奈落の底へと一気にたたき落とし、エイシンと、そしてその家族と、これからもずっと一緒に仲良く過ごしていけると信じていた名無子の胸に大きな悲しみをこみ上げさせた。



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