HALF.
episode.32 (ページ3/3)
目をやればエイシン用にと出されたお皿の上にはケチャップで目鼻とたてがみを描き加えられたライオンオムライスが乗っている。
「ゲッ、なんだよ、これ! 俺はこんなんで喜ぶガキじゃねぇー!」
思いっきり顔をしかめたエイシンの横では名無子が嬉しそうな声をあげた。
「うわぁ、エイシンのはライオンさんだ! ライオンさんは動物の中で一番強いんでしょ? エイシンもすっごく強いからピッタリだね!」
名無子から尊敬に満ちた目でキラキラ見上げられ、エイシンが満更でもない様子で頭を掻いた。
「まぁ、確かに名無子が言うことも一理あるか。ライオンも……そう、悪くないかもな」
エイシンの変わりように母親がフフッと笑う。
「さぁ、ふたりとも手を洗ってきてね。お夕飯にしましょ」
そこへ隣室から今度はエイシンのお父さんが顔を出した。
名無子の姿を認め、こちらもまた笑みをこぼす。
「おっ、名無子ちゃん、来たね。いらっしゃい。手は洗ったかな?」
「おじちゃん、こんばんは。まだ手は洗ってないよ」
「そうか、じゃあ早く洗っておいで。手洗いうがいをしない子はオジサンが捕まえてお仕置きしちゃうからなー?!」
エイシンのお父さんが言いながら両手を振り上げ、ガオーッ襲いかかるマネをする。
名無子がキャーッと大喜びで走り出し、それに引きずられ、
「オ、オイ、名無子ッ!!」
エイシンもバタバタ洗面所へと駆けこんでいく。
「こらぁ、待てぇー!」
子供たちふたりを父親が両手をあげて追いかけまわし、母親は、もうお父さんてば、と愉快に笑う。
エイシンの家に四人の楽しげな声が響き渡った。
to be continued.
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