HALF.
episode.30 (ページ2/4)

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逃がしてたまるか――。

必死に男を追う俺のあとをチョウジがついてきている。
その後ろをだいぶ遅れて名無しが走っていた。
どうやら名無しは自分の医療リュックを持ち出していた分、遅れをとったらしい。
先ほどまで背負っていなかった大きなリュックが名無しの背中で揺れていた。

たぶん。

俺は逃げていく男の後ろ姿を眉根を寄せて凝視する。

コイツの狙いは名無しだ。
おそらく大名の命ってわけじゃない。

その証拠にさっきあの部屋で大名を殺しちまおうと思えば俺らが辿りつく前に殺せたはずだ。
そうせずにわざわざ俺らを待って名無しの姿を確認した途端、逃げ出した。

まるでついて来いって言ってるみたいにな。
それに。

俺は背後に遠ざかっていく大名家へと意識を向けてみる。
そちらでは特にこれと言った異変はいまだに感じられなかった。
俺らのいない今、あの屋敷を狙うには絶好のチャンスなのに、だ。
であれば、なおのこと、狙いは名無しだろう。
しかも、襲撃の連中とは別に、コイツの単独行動である可能性が高そうだ。
俺は前をゆく背中を睨みつけたまま、視線にさらに力を込めた。

前回のがしてんだ。
今度こそ捕まえてやる。



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