HALF.
episode.29 (ページ3/6)
「……」
ふたりからスッと目を逸らし、俺はそのまま縁側伝いに逆の方向へ足を進ませる。
屋敷の裏手まで来るとそこの縁側に腰を下ろした。
近くの柱に肩を預け、目を閉じる。
息を吸うたび、息を吐くたび、俺の胸は軋みを訴え、悲鳴を上げる。
いってぇ……。
なんかこんなふうに体の痛みを感じるのは久々な気がする。
そりゃそうかと思う。
だっていつもお前がすぐに治してくれるもんな。
名無し――。
俺の傷も、他の奴らの傷も、いつだってすぐに名無しが治してくれていた。
頭の中に治療が終わった時に、ハイ治りましたよ、ってアイツが見せる笑顔が浮かんで、
早く治せよ、名無し。
俺にこんな痛ぇ思いさせんなよ……。
俺はひとり心ん中で呟いた。
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