HALF.
episode.29 (ページ2/6)

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任務の内容を正確に三人に伝え、俺たちは火の国の大名家で護衛の任に就いた。
その任務も開始から、はや五日目を迎える。
大名家で泊りこみ、敵襲に備えたこの五日間、俺らはすでに三度の襲撃に遭っている。
さすがに腕の立つ奴が使わされているのだろう、俺らはなんとか大名の命は守れているものの、敵を捕まえることもできず、戦闘後は満身創痍の身で残されるばかりだった。
里に応援の要請はしているが、人員が確保できないのかすぐの増援は無理とのことで、綱手からはしばらく俺らのみでしのぐよう指示が届いた。
四度目の襲撃に遭ったのはそんな矢先のことだった。
例のブルーグレーのインナーと黒のベストを着こんだ敵を追いかけ、大名家の屋敷内から庭に飛び出した俺はあと一歩のところで敵からの強烈な一撃を胸にくらい、取り逃がしてしまった。
思いっきり右肺を圧迫され、ゲハッと地面に四つ這いにくず折れる。
その俺の前を敵はスルリと余裕の顔で逃げて行った。

クッソー。

敵の後ろ姿を悔しげに睨みつけながら俺は右胸を押さえて立ち上がった。
自分の呼吸で上下するたびキリッと痛む胸にうまく息ができなくて咳き込みそうになる。

名無し――。

いつものように治してもらおうと大名家の広い庭を見回すと、縁側に名無しの姿を見つけた。
俺の中で何かがホッとする。
すかさず、名無し、と呼ぼうとして、俺はその声を飲み込んだ。
名無しは俺と同じように戦って怪我をしたチョウジの手当てをしていた。



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