HALF.
episode.26 (ページ8/9)
やたら長く感じる一瞬とはこのことだろう。
俺は声を失い、ただ茫然と沈黙の音を聞き、そして、
ドクンッ――。
それまで止まっていたんじゃないか思うほど静かだった心臓が急に刻んだ鼓動の衝撃に意識を弾かれた。
「わ……悪ィッ………!!」
慌てて上体を起こし、立ち上がろうとする。
「あ、隊長」
片膝立てた俺に名無しが地面から上半身を起こし手を伸ばしてきた。
「ここ、傷になってんじゃないですか」
名無しは俺の顎の下あたりにそっと触れ、ふわりとチャクラを流しこんだ。
名無しが出かけに作った俺の剃刀傷を見つけて治してくれる。
「ハイ、治りましたよ」
数秒とかからぬ治療の後に名無しがニッと笑って俺を見た。
その顔になぜか俺は引き込まれてしまった。
こんなチッコイ傷もコイツはちゃんと見つけてくれる。
敵と戦った後だって、何を言わなくてもコイツは俺の痛ェとこ全部ちゃんとわかってて必ず治してくれる。
コイツがいるから俺は怪我するとか死ぬとかそんなこと考えずに戦うようになったのかもしんねぇ。
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