HALF.
episode.26 (ページ6/9)
「そろそろ行くとす……ん?」
イチヤがなにやら俺を見てククッと笑っている。
口元に拳をあてがい、肩を揺らす後輩の姿に俺が目を眇めたとき、自分の腰もとでモゾッと何かの動く気配がした。
バッと顔を向けると、
「お前か、名無し……」
名無しが俺の忍ポーチを開けた姿勢でいたずらを見つかった子供のような顔をした。
手には食い終わったせんべいの空き袋を握っている。
「俺のポーチにゴミを捨てようって魂胆かい……」
「ハハッ……」
「ハハッ、じゃねぇーんだよ!」
名無しは俺の不機嫌な睨みをかわしつつ、ポーチの中にぐいぐいゴミをねじ込むと何食わぬ顔でポーチの蓋を閉めた。
「っつぅーか、だからゴミ入れてんなよ!! 何だ、その当たり前のような態度?! ありえねぇーよ!!」
「あーもうハイハイ。隊長にはコレあげるから」
名無しはなだめすかすような口調でのたまうと、いつ捕まえたんだかジタバタ動くカブトムシを俺の手につかませた。
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