HALF.
episode.24 (ページ1/5)

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ザザザザァー。

紙袋でできたでっかい袋を傾けて、長方形の箱の中に飼料を流し込む。

「ほら、食え」

俺は周りにたかるシカに向かってぶっきらぼうに言い放った。
俺は今、奈良家のシカ園にてシカの餌やりをしている。
基本的に園内のシカは広大な敷地内に林立する木々や草を餌としているが、それだけに頼ると若芽がすべて食われて森の退廃を招きかねない。
そのため森の保全とさらにはシカの栄養状態の向上も兼ね、奈良家では定期的に人工的な飼料を与える。
もちろんほとんど天敵のいないシカ園ではその個体数が増えすぎるので、数の管理は重要になるが、そこは各個体の耳につけられた焼き印で追跡調査をおこない、一定の数に安定するよう調整していた。
そして餌やりは家族の間の当番制で、広いシカ園の中に散らばるいくつもの餌やりポイントにくそ重い飼料を運んでやらねばならないこの作業は誰もがめんどくさがる重労働だった。
それを今、俺がやっているわけなのだが、じゃあ今日俺が当番の日であるかと言えば――そうではない。

だったらなぜって……。

「いやぁ、悪いな、シカマルゥ。すっかり手伝わせちまって」

本日のシカ餌係のオヤジがさも白々しく俺に気遣う振りをする。
そう、こうなったのはすべてコイツのせい、食わせ者のオヤジのせいだ。



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