HALF.
episode.22 (ページ3/3)
『死なないで。母さん』
何かを想像しようにも俺には名無しの母ちゃんがもう生きてないんだろうってことくらいしか思い浮かばない。
今更ながら自分がアイツのことを何も知っちゃいねぇーんだと気づかされ、妙に気持ちが波だった。
俺は病院の門をくぐり、先ほど名無しを預けた病室の前に立った。
チョウジが来ているはずだが、部屋の中から話声は聞こえてこない。
まだ名無しが起きてねぇーんだな。
俺は名無しを起こしても悪いとノックをしないまま、ソロソロとスライド式の扉を開ける。
ドアとその枠の間に数センチの隙間が生まれ、そこから中を覗いた俺は視野に映る光景に目を見開いた。
ベッドわきのイスに腰掛けたチョウジが名無しの手を握り、まだ目を覚まさぬその顔を心配そうに覗きこんでいるのだ。
――。
言葉を失い、金縛りにあったように体が動きを止めた。
でもすぐにハッとして、慌てて扉を閉める。
そのまま呆然と病室の前に立ち尽くした。
チョウジ。
アイツ――。
俺の胸が異様な速さで鳴りだした。
名無しのことが好き、なのか?
to be continued.
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