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Girl's side-29 (ぺージ1/3)

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……カ…さ…ん……。
…シカ…マ…ルさ……。

「……ん」

私の網膜にあなたの姿が徐々に徐々に像を結ぶ。

「……シカマルさん」

靄の中から抜け出るように次第にハッキリしてくる視界の中、私の顔を必死に覗き込むシカマルさんを、私は見た。

ここは……夢?

私が名前を呼んでいたシカマルさんがここにいる。
シカマルさんは真剣な眼をして口を開いた。

「あぁ、俺だ。わかるか? お前、任務でケガしてここに、病院に運ばれたんだ」

声が空気を震わせて、その振動が耳の中で感覚器に伝わるのがわかる。
その感覚に、私は、あぁ、そうか、ここは現実の世界なんだ、と思えた。

「…そぉ…なんですか……」
「意識が戻るまで4日もかかったんだぞ。大丈夫か? 気分悪かったりしねーか?」

そこまで言うと、シカマルさんは目を伏せて、

「悪ィ。こんな急にいろいろ言われても困るよな」

私の上から体を引くと、ベッドの端に腰を下ろし、口元を手で覆った。
薄暗い部屋の中に浮かぶシカマルさんの姿に、私は心の中でその名前を呟いた。

シカマルさん……。

私の心臓が勢いよく鳴り出す。
身じろぎしようとして体の痛みが一気に私に襲いかかった。
増していく現実感に、私の記憶が次々と頭の中によみがえり、襲われたあの日の情景を思い出させる。
再開したあの忍の顔。
焦ってた自分。
幻術と起爆札と轟音。
守れなかった約束。
それと…家に忘れたお守り。

「私……」
「ん?」

言葉を発した私に、シカマルさんが口元の手をはずし、いたわるような視線を注いだ。

「お守りを忘れちゃって」
「お守り?」
「いつも肌身離さず持ってたんですけど。今回に限って家に忘れちゃって。そしたら、こんなことに……。早く任務終わらせたかったのに。敵の幻術にハマって、あげく起爆札にも気付けなくて…くらって。いつも、きっと、お守りに守ってもらってたんです、私」

小さな声でしゃべる私の話は聞き取りづらく、とりとめがない。



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