take me out
Boy's side-29 (ぺージ1/3)
楽勝――。
任務の合間を縫って、俺が名無子の病室に忍び込むこと3回目。
この部屋唯一の出入口である扉から人目を避けて入り込む。
未だ誰にも気づかれちゃいなかった。
巡回時間も調べはついている。
今もついさっき、巡回の忍が出て行ったばかりだから1時間程度は平穏なハズ。
ここ、イスねぇんだよな。
さすがに面会謝絶だけあって、室内にイスの必要性は認められないらしく、部屋のどこにもイスは置いてなかった。
俺はベッドに寄りかかる感じでその端に軽く腰をおろした。
眠り続ける名無子に話しかける。
「悪ィな。昨日来らんなくって」
コイツが倒れて今日で4日目。
「任務に2日かかっちまって。今、里に帰ってきたばっかりだ」
まだ目覚めてくんねぇーのか。
「結構、任務がんばってんだぜ、俺?」
もう目ェ開けてくれたっていい頃だろ?
見下ろした名無子の寝顔は相変わらず静かで、このままずっと目を覚まさないんじゃないかって、俺は変な恐ろしさに包まれる。
んなわけねぇーよ。
一生懸命、自分で自分の考えを打ち消した。
綱手だって目覚めるまであと2〜3日って言ってたじゃねぇーか。
もうすぐ目を覚ますはずだ。
不安に溺れそうで、俺は名無子の唇に手を伸ばした。
指先に伝わる名無子の体温。
そのぬくもりに、大丈夫だと俺は自分自身に呟いて、名無子の唇を指でツーッとなぞる。
と、その指先にフッといつもより強く息がかかった気がした。
息……?
「ん……」
声?
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