take me out
Boy's side-05 (ぺージ4/4)
俺は急いで方向転換する。
ひどい雨の中を俺は名無しに向かって走り出した。
微動だにせず、空を見上げて一身に雨を受けている名無し。
俺はその真正面に立った。
それでも名無しは俺の存在に全く目を向けない。
俺は軽く舌打ちして
「おい。何してんだよ。こんな雨ん中突っ立ってたら風邪引くだろーが。あぁ?」
と毒づく。
俺は持っていた傘を開こうとして手を止めた。
名無しの瞳の動きに目を取られる。
ゆっくり、ゆっくり。
名無しの視線が空から俺へと降りてくる。
ゆっくり、ゆっくり、その焦げ茶色の瞳が俺を見て。
俺はハッとする。
コイツ……泣いて、る、のか?
雨に濡れた名無しの顔は泣いているかのようで。
頬を伝う滴は雨なのか、それとも……。
涙?
っつぅか……。
コイツの眼――全然違う。
任務の時の落ち着き払った冷静な眼ではなくて。
ひどく透き通った、触れたら壊れてしまいそうな、そんな脆さをたたえた瞳。
――。
俺の思考が停止する。
その場から動けなくなった。
濡れていく体もそのままに、俺は名無しの前に立ちつくした。
さっきより激しさを増した雨が俺たち二人を叩き付けている。
to be continued.
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