take me out
Boy's side-04 (ぺージ3/3)

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人の姿らしき黒い塊が俺の目に留まった。
なんとなく俺は気配を消して、丘の上の人影に近づいて行った。
どうやら女らしい。
しゃがみ込んで空を仰ぎ見てる。
誰もいないと思っているのか、ひどく無防備な後ろ姿に見えた。

何してんだ、一体?
空見てるだけか?

星空の下、真っ暗な闇の中で、無防備な彼女の周りの空気だけが儚げに揺れているように見える。

もしかして……泣いてる?

俺はもう少し近寄ろうとして足を一歩踏み出した。

ポキッ……。

は? ポキッ?!

足元に目を落とせば、俺の足の下に小さな枝が押し潰されている。

マジかよ?!
めんどくせぇ!!

このタイミングで木の枝を踏みつける自分を俺は素直に呪った。
でも、そんな思いも時すでに遅く、先ほどまで彼女を取り囲んでいた夜気が瞬時に崩れていく。
目の前の空気がすぐさま硬くなった。
彼女は立ち上がると俺とは反対側の斜面へと走り出し、そのまま一気に跳躍した。
丘の上からまるで星空に向かって飛び込むようなその姿がひどくキレイで、

「おい――!!」

俺は思わず後ろ姿に向かって声をかけた。
けど、俺の声なんか届く間もなく、彼女の姿は丘の向こうに飲み込まれ、消えてしまっていた。
取り残された星空と俺の間を空虚な風が吹き抜ける。
丘から飛び降りたときの、星明かりに照らし出された後ろ姿が髪を二つ分けにした少女のように見えて。

……名無し?

俺は無意識のうちに名無しのことを思い出していた。





to be continued.

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