take me out
Girl's side-05 (ぺージ3/3)
無我夢中で走って、どこをどう走ったのか全くわからない。
苦しくあえいだ自分の呼吸に私の足がようやく動きを止めた。
気が付けば私の周りに野原が広がっている。
乱れた呼吸と共に、私は空を見上げた。
厚くたれ込めた灰色の雲からは容赦なく雨の筋が落ちてきて、私の顔や肩、腕、全身を叩き付ける。
このままこの雨が、私の存在をすべて洗い流して消し去ってくれないかな……。
私の意識が空へと飛ばされる。
何ももう感じられない、感じたくない。
もうイヤなんだ――。
「おい…な……だよ………か……ろーが…」
反応することを拒否した私の感覚器に、何かが無理矢理入り込んでくる。
声……?
なに……?
私は朦朧とする頭で、外界から与えられた刺激をなんとか受け止めた。
焦点の合わない瞳が恐ろしく遅いスピードでその刺激に反応しようとする。
ゆっくりと、ゆっくりと。
私の視線が空から現実へとおちていく。
私の眼球が目の前に立つ人物をとらえた。
黒髪の目つきの鋭い青年。
だれ……?
知ってる気がするのに、今の私の頭では理解出来なくて。
その青年をぼうっと見つめたまま、私は彼の名前を一生懸命考えようとしていた。
to be continued.
(ページ3/3)-29-
←|→ backselect page/254