take me out
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俯く名無子を瞳孔全開に見つめてしまったのはただ単に俺に目をそらす余裕さえなかっただけのことだ。
胸の中では心臓が死ぬほど小さく収縮し、俺は一瞬呼吸が止まる。

なんか、ほんと悔しい――。

なんだって、こんな嬉しいことを言ってくるんだ。
もっと違う、俺をこき使うような、あるいは恥をかかせるような、そういう自分にしか得のない罰ゲームを考えたっていいのに。
それをコイツは俺の決めたペナルティーをかっさらって、自分もやっぱりそれがいい、と言う。
自分も俺とのキスがいいって。
俺にキスして欲しいって――。

んな可愛いこと言われたら惚れずにいらんねぇだろーが。

俺は口元に手を当て、視線を意味もなく斜め横の空気に向けた。
すげぇ悔しくなる。
こういうことを言ってくるコイツに俺は惚れずにいらんねぇーから、いつだって悔しいくらいどうしようもなく俺はお前に惹かれていくんだ。

俺のこんな気持ち、お前、全然知らねぇーだろ?

俺は視線を名無子に戻し、熱がこもって異様に汗ばむ両の手をその肩にそっと置いた。

「一回でいいのかよ?」

えっ? と顔を上げた名無子の茶色い瞳を覗き込む。

「キス。一回でいいのかって聞いてんだ」

名無子のまつげが恥らいがちに伏せられた。
俺はその後を追うように名無子に唇を寄せる。

「答えがねぇーなら、俺が満足するまでな」

慌てて目を上げた名無子が何か言おうと口を開くその前に俺はきつく唇を押しあてて名無子の声を柔らかな感触ごと飲み込んだ。
重ねては離し、離しては重ねる唇。
こんなふうに罰ゲームをするのなら、それはタメ口で話すよりも、よっぽど互いを近くに感じられることなのかもしれない。
何度も交わす口づけに名無子の息があがって、唇から苦しげな吐息を漏らす。
それを俺は執拗に塞ぎこんだ。

「まだだからな。俺が満足するまでって言ったろ?」

俺は熱く火照る名無子の唇に一層強く口づけた。





end.
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