take me out
penalty (ぺージ5/7)
部屋の外はどっぷりと闇に覆われ、辺りはもう深夜の域に達しようとしている。
ついには俺も帰らなきゃいけない時間となり、二人の勝敗の行方はといえば――名無子の勝利となった。
「ちぇ、丁寧語一回も使わねぇーとは。予想外だぜ」
玄関に向かった俺が振り向くと、すぐ後ろで名無子がちょっと得意そうに笑った。
その顔に肩をすくめ、苦笑しながら訊ねる。
「で? お前の俺に対する命令ってなんだよ? まぁ、今じゃなくてもいーけどな。次会うときまでに考えとけよ?」
俺の言葉に名無子は少しだけ目を伏せた。
「もう決まってます」
「ん? 命令の内容?」
「そう」
頷く名無子に俺は促す。
「なんだ、決まってんなら言えよ。約束だからな、なんでも言うこと聞くぜ?」
名無子が俺をチラリと見上げ、言いづらそうにまたすぐ俯いた。
「……なじ」
「え?」
声が小さすぎて聞こえず俺は聞き返す。
すると、
「おんなじ」
名無子が意を決したように俺を真っ直ぐ見つめて言った。
「シカマルさんの罰とおんなじ。……キス、してください」
「――――」
呆気にとられ、思わず目を瞠った。
ちょ……何言って……。
俺は首に片手をあてがい、上ずる声を無理に絞り出す。
「それじゃ罰ゲームになんねぇだろーが」
お前に科したペナルティーと同じ内容じゃ俺にとっては褒美になっちまうよ。
そうかもですけど、と口ごもる名無子は頬だけでなく、その首元や耳の先まで肌をサクラ色に染め、視線を斜め下に落とし、口元を小さく動かした。
「でも、やっぱり私もシカマルさんに……キスして欲しいから」
バッと顔に熱が広がった。
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