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やっべぇ、こんなに照れさせちまったんじゃ、タメ口なんて聞いてくれるわけ……。

「今日だけなら……いいですけど」

え?

聞こえた言葉が信じられず、俺の口が半開きになる。
それを慌てて引き結び、俺は改めて名無子に問いかけた。

「今日だけって……」
「これからずっととか言われると困りますけど、今から数時間くらいなら丁寧語使わずに話してみようかなって。そっちのほうがよかったら、これから直していってもいいし。とりあえずは今日だけ。それでもいいですか?」

上目遣いに訊ねられ、俺は迷うことなくコクコク頷いた。

「いい。そんで充分だ」

俺の言葉にホッとした表情を見せ、名無子の顔に笑みが広がった。
タメ口がどうとかいうよりも俺にしてみたら互いの距離を縮めようとしてくれる名無子の気持ちがなにより嬉しい。
乗り気でないことも俺のために、ふたりの距離を近づけるために、なんとか頑張ってみようとするそんな名無子の姿にひどく胸が温められた。
と同時に、さらなる欲まで出てきてしまう。

「あのさ」

自分の顔を覗き込む俺に名無子が、なんですか? と目をしばたたかせる。
俺はその焦げ茶色した瞳をじっと見つめた。

「せっかくだから罰ゲームつけようぜ?」
「はぁ?」

まったく想定外といった顔で目を瞠る名無子がぶっきらぼうに言い放った。

「何言ってるんですか、罰ゲームなんてヤです」
「そのくらいしなきゃ、お前タメ口使わねぇーだろ?」
「そんなことないですよ」
「ほら、今もデスマス調。お前の基本口調がそうなんだから無理だって。あ、それとも本当はタメ口で話す自信がねぇとか?」

俺の挑発に名無子がムッと口を曲げた。

「違い……」
「マス」



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