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cherry (ぺージ4/6)

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『サクラの花びらをねぇ――』

脳裏に響くイノのウキウキ弾む明るい声に、俺は寝転んでいた体の上半身を片肘ついて少しばかり持ち上げた。
それからもう片方の手を上空のサクラに向かってグッと伸ばす。
と、

「シカマルさん?」

突然見せた俺の行動に名無子が軽く目を開き、草の上からちょっとだけ身を起こして俺を不思議そうに見つめてきた。

「まぁ、見てろって」

俺は口角を引き上げて笑ってみせると、真上に向けた手のひらで一枚、二枚とサクラの花びらを捕まえ出した。

これで三枚、と。

最後の一枚をつかんだところで、俺は空中に舞う花びらから名無子へと視線を戻し、手にした三枚のハート形した花びらをその手に握らせた。

「これ……」
「恋人にとってもらえると幸せになれんだろ?」

イノが言ってたんだ。

『サクラの花ビラをねぇ、空中で舞ってるもの三枚、恋人にとってもらえると幸せになれるんですって〜!』

だから、それ、お前にやるよ。
俺は別にそんな話信じてるわけじゃねぇーけど、でも俺がこうしてやることでお前がホントに幸せになれんなら安いもんだろ?

俺はちょっと照れ臭くなって名無子からつぃっと視線を逸らす。
その前で名無子が、この話を既に聞いたことがあるのだろう、

「ありがとう、シカマルさん」

ってキレイに笑って、恥ずかしそうにコロンと地面に転がった。
俺のやったサクラの花びらを両手で大事に包み込み、嬉しそうに笑う姿は俺の胸を愛しいなんて想いで埋め尽くすには充分すぎるもので、俺は思わず名無子に指を伸ばす。
その指先で名無子の柔らかで滑らかな頬に触れた後、俺は今度こそ名無子にキスをした。
十数秒、ふたり求めあって重ねた唇を、一旦わずかに引き離す。
でもそれじゃ物足りなくて、俺は未練がましくもう一度口づけて、それからようやく名無子の唇を解放した。



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