take me out
cherry (ぺージ1/6)

 bookmark?


四月も中旬、穏やかな春の風に頬を撫でられながら、今日の任務を早めに終えた俺は野原の端の木の下で寝転がっていた。
両手を頭の後ろに組んで枕にし、仰角45度で眺める空は、どこまでも青い光に満たされてそこを流れるまっ白な雲に青い春を映し出す。

なんかこうして上向いて寝転がるの、久しぶりだな。

任務に追われてこんなふうにのんびり空を見る機会が減っているのはたしかだが、それ以外にもどういうわけか上を向くことが少なくなった気がして、俺はなんでだろうと自問してみる。
と、そのとき、俺の額にひらりと落ちてきたものがあった。
なんだ? と思って手に取れば、それはサクラの花びらで、俺は斜め上にあげていた目を首をのけぞらして真上に向けた。
俺の頭上高くでは、枝を大きく広げたサクラの木がキレイな花を満開に咲かせ、そこだけ世界をピンクに色付けている。
そのサクラ色の世界からは、春らしい温かな風がそよげばもちろん、たとえ風のない無風状態であっても、淡い桃色の花弁が少しずつ空中に舞い落ちていた。
どうやら俺の額に落ちたのはそれらのうちの一枚らしい。
俺は反らしていた体勢を戻し、手にした花びらを顔前に掲げて眺めた。

そういやイノがサクラの花びらのことで騒いでたな。
確か――。

ついさっきまで一緒だったイノが任務の休憩時間に賑やかに話していた様子が目に浮かぶ。
何の気なしに聞いていた話の内容を思い出そうと軽く目を細めたとき、誰かのこちらにやってくる足音が聞こえた。
人が草を踏むキシキシとした音が耳に届き、俺は空からそちらへと視線を落とす。
その視界に映った人影は俺のよく知っている奴のもので、俺は思わず目元を和らげた。

「お前も任務終わったのか、名無子?」
「うん、今終わりました」

コックリ頷いた俺の恋人名無子が茶色いふたつわけの髪を揺らし、隣にストンと座った。
焦げ茶色のキレイな瞳が俺の顔を覗きこんでくる。
俺は先ほどまで頭を占めていたイノの話などもうすっかり忘れて名無子に問いかけていた。

「どーした?」



(ページ1/6)
-224-
|
 back
select page/254

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -