take me out
happy (ぺージ10/12)

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俺の手に握られた花火の入ったブリキのバケツとケーキの入った紙袋が、階段をのぼるごとにしっかりとした手ごたえで揺れ動く。
俺のために持ってきてくれた花火。
俺のために作ってくれたケーキ。
任務で忙しいことくらい十分知ってる。
そんな中でも名無子は花火を買ってくれていた。
今日だって、任務開けの疲れた体でケーキを作ってくれた。

朝方帰ってきて、それから寝たって言ってたけど、どうせそんなに寝ちゃいないんだろう?

きっと仮眠程度の眠りですぐに起きだして、このケーキを作ってくれたに違いないんだ。
名無子の行動の端っこをスルスルと手繰り寄せれば見えてくる。
コイツが俺のことを、どれだけ大事にしてくれてるかってことが。
俺は階段をのぼりきると、名無子の部屋の扉脇に立った。
後ろからついてきた名無子がドアをガチャリと開け、

「どーぞ」
「あぁ」

俺は名無子に促されるまま、中へと入り、玄関の片隅にブリキのバケツを置いた。
そして、靴を脱ぎながら言う。

「っつぅーか、今日は泊ってくかな」
「あの、明日の任務は……」

後から入ってきた名無子が心配そうに聞き返す。
俺は靴を脱いで名無子の部屋にあがり、近くのテーブルにケーキの袋を置いた。

「朝、家に帰ってから行きゃいーだろ」
「大変じゃないですか?」
「いーよ。そんくらい」

俺は、玄関であわてて靴を脱ごうとしている名無子を振り向いた。

「泊んのは無理だとしても、せめて日付が変わるまではお前と一緒にいさせろよ」

せめて、俺の誕生日が終わるまで。
俺はお前と一緒に過ごしてたいんだよ。

俺の言葉に、玄関先で名無子がパッと顔をあげ、俺の視線にぶつかると、すぐにまた俯いた。

「私は……構いませんけど」

妙にぶっきらぼうな物言いに、俺は名無子へと近づき、名前を呼ぶ。

「名無子」
「……何ですか」

靴を脱ぎ終えた名無子が、部屋のフローリングを足で踏みしめながら答えてよこす。
でも、その目は俺のほうを向こうとしない。



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