take me out
happy (ぺージ9/12)
「でも、なんか……せっかくのお誕生日なのにろくなお祝いをしてあげられなくてすみませんでした。花火も時期外れだし、ケーキも今日いそいで作ったから、たいしたものじゃないし……」
「ケーキって……お前の手作り?」
「えぇ。だから味の保証はできませんよ?」
名無子の返事に、今日コイツが言った言葉が思い出される。
『起きてから、ちょっと用事もあったんで』
その用事って、ケーキ作りだったのか?
俺はあの時、俺より大事な用事があるのかって突っかかった自分が恥ずかしくなった。
名無子の用ってのは、俺のためにしてたことで。
俺より大事とか大事じゃないとか、比べることさえできないモノ――。
俺は名無子の脇をすり抜け、アパートの外階段をのぼり始めた。
俺の急な行動に名無子が驚いて振り返る。
「シカマルさん?」
俺は階段をのぼりながら、前だけ向いて一言告げた。
「やっぱ、寄ってく、お前んち」
「え? さっき、明日早いからって……」
「いーんだよ」
階段下から俺を見上げる名無子の顔を見ることもせず、俺は一歩一歩階段をあがっていく。
その俺の後を名無子が急いで追いかけてきた。
トントンと二人の立てる足音を聞きながら、俺は胸の中で呟く。
いーんだ、今は。
本当に。
明日の任務がどんなに早くても、今はお前といることを優先させたい――。
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