take me out
happy (ぺージ7/12)

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俺と目が合うと、名無子は花火の微かな光の中で、ゆっくり、俺に笑った。
キレイだった。
俺は手にしていた花火を持ち替えて、空いた右手で名無子の手をそっとつかんだ。
川べりに並ぶ、俺と名無子の二つの影。
名無子の囁くような声が、俺の耳に届く。

「来年は、花火大会に行けるといいですよね」
「あぁ、そうだな。来年は必ず行こう」

答えながら、俺はふと気がついた。

コイツ、わかっていたんだな。
花火大会に行けずに、俺が沈んでいたことを。
だから、わざわざ季節外れの花火なんか持ってきたんだ。
これで少しでも俺の気が晴れますようにって。

つないだ手から感じるじんわりとしたぬくもりが、名無子のそんな想いを伝えてくる。
俺はつないだ右手に力を込めて、名無子の左手をぎゅっと握りしめた。





花火の燃えカスでいっぱいになったバケツを左手にぶら下げ、右手には名無子の左手を握りしめ、家路につく。
今日、俺が名無子を待って流れた時の半分にも満たない時間しか名無子と一緒に過ごしちゃいないのに、それでも、このひどく温まった胸の内はなんなんだろう。
日暮れからの数時間、コイツがいてくれただけで、自分がこんな穏やかになるなんて。

バカみたいだけど。
すげぇ幸せだ。





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