take me out
happy (ぺージ3/12)
アイツなら自分の彼氏の誕生日に対し、「そんなの覚えてませんけど」くらい言いかねねぇー。
そういう奴だ、名無子ってヤツは。
俺は膝を抱えていた手で、今度は頭を抱えた。
ハァーッと盛大なため息を吐き出す。
それならそれで仕方ない、そんな気がしてきた。
仕方ないついでにアイツんちまで行ってみようかとも思う。
でも、それもなぁー。
さすがにそれには俺の心も躊躇を見せた。
行ったところで、名無子は任務に出ていていないかもしれない。
たとえ、うまく会えたとしても、そこで俺は、「今日って俺の誕生日でさぁー」とかなんとか言えっていうんだろうか。
自分から?
ンなこと言えるか、カッコ悪ぃー。
俺は抱えた頭をクシャッとつかんだ。
第一、そんなん悔しすぎるだろーが。
何が悲しくて自分の誕生日を自己申告しなきゃいけないんだ。
しかもその申告は、友達とかにするわけじゃなく、一番覚えててしかるべき相思相愛の相手、彼女にすることになる。
これは相当、屈辱的だ。
「あぁ、もう!!」
俺は一人、大きな声で叫ぶと、頭をガガッと掻いた。
名無子に会いてぇーのに座ったままの重たい腰。
俺は棋盤の前で、刻々と流れてゆく時間をジリジリ感じることしかできなかった。
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